2012年12月20日木曜日

10年前、渋谷にて


先日、渋谷の映画館「渋谷東急」が閉館するとの記事があった。

かつて駅前にあった東急文化会館が解体されることになり、その中にあった複数の映画館のうち「渋谷東急」がクロスタワー内に移転し現在地で営業していた。

‘あれからもうそんなに経ったのか・・・’とふと忘れかけていた記憶がよみがえった。

 2003年、かつて渋谷の映画館のシンボル的存在であり、国際映画祭のメイン会場でもあった巨大映画館「渋谷パンテオン」を始めとする「渋谷東急1」「渋谷東急2」「渋谷東急3」の4館が、老朽化した東急文化会館の解体に伴い閉館することになった。
 
 


文化会館には「五島プラネタリウム」が入っており、屋上の銀色のドームがこれも長く渋谷のシンボルであった。幼少の頃、自由が丘に住んでいた私にとって、東急文化会館はプラネタリウムや映画館、レストランなどなじみ深い建物で、閉館イベントへの参加はもちろん、数ヶ月にわたりその姿を写真に収めていた。
 
 
今再び、アルバムを開けると懐かしい渋谷の風景が広がった。つくづく写真とは記録であると思う瞬間である。





 


2003年といえば、「千と千尋の神隠し」がアカデミー賞・長編アニメーション部門を受賞、小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられ、六本木に「六本木ヒルズ」が誕生した。
こうして振り返るとつい先日の出来事であったようにも思えるが、10年は早いものである。
 
閉館が決まり、映画館に恋慕の情を寄せる人々が、壁にその思い思いを書いていたが、アルバムの中の「これからも映画は渋谷で!」という写真に目がとまった。
 







 






長い年月は、否応なしに街を変えてゆく。
若者の街として大きく発展していた当時の渋谷で全盛を誇っていたミニシアターは、近年閉館が相次ぎ、まさに絶滅寸前の状況である。「映画は渋谷で」と言えなくなる日もそう遠くはないだろう。

 過去を振り返るのではなく、未来志向と行きたいところだが、「人とは常に現在に不満を持ち、過去を美化して生きてゆくものである」という、今年公開の「ミッドナイト・イン・パリ」の劇中の台詞が胸に響く。

この暗い時代の年末に明るい未来を見つけることは出来るのだろうか?
そう考えれば考えるほど過去に逃げたくなるもので、なにやら今小さな楽しみを見つける
ことが身の丈にあった一番の生き方のようにも思える。

※ちなみに東急文化会館の跡地には、今年新たに「渋谷ヒカリエ」が誕生した。